茨城県牛久市、のどかな田園風景の中にひっそりと佇む一軒の建物。その洗練されたモダンな外観からは想像もつかないほど、ここKAIZEN TRIGGERには日々多くの人々が訪れる。彼らを引き寄せるのは、カイロプラクティックとパーソナルトレーニングを融合させた独自の治療法と、その驚異的な効果だ。
ある初夏の朝、爽やかな風が吹く中、受付には既に一人の女性が立っていた。明るい笑顔が印象的な彼女の名は鳥海鶴子、通称トリ子さん。ここの受付スタッフだ。
「おはようございます、カイゼン先生」
颯爽と現れた白衣の男性に、トリ子さんが挨拶を投げかける。
「おはようございます、トリ子さん。今日も一日、よろしくお願いしますね」
カイゼン先生こと、加井川善道。穏やかな物腰の中にも、確かな信念を感じさせる眼差しが特徴的な男性だ。
「あの、先生」トリ子さんが少し躊躇いがちに声をかける。「実は、最近気になることがありまして…」
「どうしました?」
「私、最近右手の親指の付け根がズキズキ痛むんです。スマホでSNSを見たり、メールを打ったりするときに特に…」
カイゼン先生はトリ子さんの言葉に、静かにうなずいた。
「なるほど、どのくらいの期間、その症状が続いていますか?」
「そうですね…約2週間くらいでしょうか。最初は軽く気にする程度だったんですが、徐々にひどくなってきて…」
「わかりました。それでは、少し診させていただいてもよろしいでしょうか」
トリ子さんが頷くと、カイゼン先生は慎重に彼女の手を取った。
「こちらの部分を軽く圧迫します。痛みはどうですか?」
「はい、ズキッときます」
「なるほど。トリ子さん、あなたが抱えている症状は、おそらくDe Quervain腱鞘炎という状態だと思われます。デジタルデバイスの多用による反復性運動過多損傷、いわゆるRSIの一種ですね」
「え?それって大丈夫なんでしょうか…」トリ子さんの表情に不安の色が浮かぶ。
「ご心配なさらないでください。適切な処置と生活習慣の改善で、十分に対処できる症状です。ただし、放置すると慢性化する可能性があるので、今のうちに対策を立てましょう」
カイゼン先生の言葉に、トリ子さんはほっと胸をなでおろした。
「はい、お願いします!でも先生、私のような症状の方って、他にもいらっしゃるんですか?」
「ええ、実はかなり多いんですよ。現代人の多くが、知らず知らずのうちにRSIのリスクにさらされているんです」
カイゼン先生の説明に、トリ子さんは真剣な面持ちで聞き入った。彼女の目には、自分の症状を理解しようとする強い意志が宿っている。
こうして、トリ子さんの「手の痛み撃退」への道のりが、静かに、しかし確実に始まったのだった。
朝のミーティングを終えたカイゼン先生とトリ子さんは、診察室で再び向かい合った。窓から差し込む柔らかな陽の光が、清潔な白を基調とした室内を優しく照らしている。
「それでは、トリ子さん。あなたの症状について、もう少し詳しくお話ししましょう」カイゼン先生は、穏やかな口調で切り出した。
「はい、お願いします」トリ子さんは、真剣な面持ちで頷いた。
「先ほど申し上げたように、あなたの症状はDe Quervain腱鞘炎という状態です。これは、親指の付け根にある二つの腱、長母指外転筋腱と短母指伸筋腱を覆っている腱鞘という組織が炎症を起こしている状態なんです」
「腱鞘…ですか?」トリ子さんは、少し困惑した表情を浮かべる。
「ええ、腱鞘というのは、腱を保護し、スムーズに動かすための袋状の組織なんです。ここが炎症を起こすと、腱の滑走がうまくいかなくなり、痛みや違和感が生じるんですよ」
「なるほど…。でも、なぜそんなことが起こるんでしょうか?」
カイゼン先生は、デスクの上に置かれたスマートフォンを手に取った。
「これが大きな要因の一つです。スマートフォンやタブレット、パソコンのマウスなど、現代人は知らず知らずのうちに、同じ動作を何度も繰り返しているんです。特に、親指でスワイプしたり、キーを打ったりする動作は要注意です」
「そういえば、最近SNSにハマってて…」トリ子さんは、少し申し訳なさそうに言った。
「いえいえ、決して責めているわけではありません。むしろ、こうした現代特有の生活様式から生じる症状に、どう向き合っていくかが大切なんです」
カイゼン先生の言葉に、トリ子さんは少し安堵の表情を見せた。
「それで、私の症状はどのように治療するんでしょうか?」
「まずは、炎症を抑えることから始めます。そして、腱周囲の柔軟性を高め、proper な動きを取り戻すことが重要です。具体的には、カイロプラクティックによる関節モビライゼーションと、それに続くパーソナルトレーニングでの機能的な筋力強化を行います」
「えっと…難しそうですね」トリ子さんは、少し困惑気味だ。
カイゼン先生は優しく微笑んだ。「大丈夫です。一つ一つ丁寧に進めていきますから。それに、ここで大切なのは、患部だけでなく、身体全体を見ることなんです」
「全体、ですか?」
「そうです。例えば、肩や首の凝りは手首の痛みとも深く関わっています。また、普段の姿勢や、デスクの高さ、キーボードの位置なども重要な要素です。だからこそ、KAIZEN TRIGGERではカイロプラクティックとトレーニングを組み合わせているんです」
トリ子さんの目が輝いた。「なるほど!だから、ここには様々な症状の方が訪れるんですね」
「そのとおりです。そして、それぞれの方に合わせたオーダーメイドのケアを提供するのが、私たちの仕事なんです」
カイゼン先生の熱のこもった言葉に、トリ子さんは深く感銘を受けた。彼女の中で、自分の症状と向き合う覚悟が、静かに、しかし確実に芽生え始めていた。
「先生、私、頑張ります!」
「その意気込み、とても素晴らしいですね。一緒に、この痛みを乗り越えていきましょう」
二人の真剣な眼差しが交差する中、診察室の空気が、希望に満ちていくのを感じた。
陽射しが徐々に強くなり、蝉の鳴き声が聞こえ始める頃。KAIZEN TRIGGERの室内は、いつもの静謐な雰囲気に包まれていた。しかし今日は、どこかいつもと違う空気が漂っている。
「どうしましょう、カイゼン先生!」
トリ子さんの悲痛な叫び声が、静寂を破った。
「落ち着いて、トリ子さん。どうかしましたか?」
カイゼン先生は、慌てふためくトリ子さんの肩に、そっと手を置いた。
「実は、昨日の夜からなんです。右手の痛みがひどくなって…」
震える手を差し出すトリ子さん。確かに、手首から親指にかけて、はっきりとした腫れが見て取れる。
「ん…これは予想外の事態ですね。さっそく診察室に移動しましょう」
てきぱきと準備を整えるカイゼン先生。その冷静な対応に、トリ子さんの動揺も少し和らいだようだ。
「で、どんなことがあったんですか?」
「はい…。最近、フォロワーが急に増えまして。DMの返信に追われていたら、気づいたらこんな状態に…」
カイゼン先生は、深くため息をついた。
「やはり、そうでしたか。トリ子さん、あなたのSNS、最近かなり人気が出てきていますよね」
「はい!私のダイエット記録、たくさんの人に見ていただけて…でも、まさかこんなことになるなんて」
トリ子さんの表情には、後悔の色が浮かんでいる。
「決して自分を責めないでください。これも、現代社会が抱える一つの課題なんです。デジタルの恩恵を受けながら、いかにして身体の健康を保つか。その難しいバランスに、多くの人が直面しているんですよ」
カイゼン先生の言葉に、トリ子さんはハッとした顔をする。
「そう言えば、最近来院される方々も、私と同じような症状の人が増えたような…」
「そのとおりです。特に、テレワークの普及やSNSの活性化に伴って、RSI患者は増加の一途を辿っています。だからこそ、私たちKAIZEN TRIGGERの役割は重要なんです」
静かに、しかし力強く語るカイゼン先生。その眼差しには、現代の健康問題に立ち向かう覚悟が宿っている。
「さて、それではこれから本格的な治療に入りましょう。まずは、炎症を抑えるための処置から始めます」
カイゼン先生の巧みな手技が、トリ子さんの腫れた手首に優しく触れる。
「痛くありませんか?」
「いえ、不思議と…むしろ、少し楽になったような」
トリ子さんの表情が、少しずつ和らいでいく。
「よかった。これはモビリゼーションという技法です。関節の可動域を少しずつ広げながら、周囲の組織の柔軟性も高めていきます」
カイゼン先生の説明に、トリ子さんは熱心に耳を傾けている。
「そして次に、この痛みの原因となっている筋肉や腱の緊張を緩めていきます。ここがポイントなんです」
丁寧に、しかし的確に進められる治療。トリ子さんの手首の腫れは、見る見るうちに収まっていった。
「すごい…。先生の技術って、本当に素晴らしいですね」
「ありがとうございます。でも、これはまだ序章に過ぎません。これからが本番です」
カイゼン先生の口元に、自信に満ちた微笑みが浮かぶ。
「本番、ですか?」
「ええ。あなたのライフスタイルそのものを、RSIと縁のないものに変えていく。それこそが、KAIZEN TRIGGERが目指す真の治療なんです」
トリ子さんの目に、期待と決意の光が宿った。彼女の「変革」への道のりは、ここからが本番なのだ。
夕暮れ時のKAIZEN TRIGGER。一日の喧騒が静まりつつある中、トレーニングルームからは、まだ活気のある声が聞こえてくる。
「はい、そのまま10秒キープです。頑張ってください、トリ子さん!」
カイゼン先生の声に合わせ、トリ子さんがバランスボールの上で、慎重にポーズをとっている。額には汗が滲み、表情には真剣さが漂う。
「ふぅ…。これって、本当に私の手首の痛みに効くんでしょうか?」
息を整えながら尋ねるトリ子さん。その目には、少しばかりの疑問の色が浮かんでいる。
「もちろんです。このエクササイズは、一見すると手首とは無関係に思えるかもしれません。しかし、実は体幹の安定性を高めることで、上肢の細かな動きをコントロールする力を養うんです」
「へぇ、そうだったんですね」トリ子さんの目が輝いた。
「そうなんです。私たちの身体は、すべてがつながっています。だからこそ、痛みのある部位だけでなく、全身のバランスを整えることが大切なんです」
カイゼン先生の言葉に、トリ子さんは深く頷いた。
「それにしても、先生。治療を始めてから1ヶ月が経ちましたが、本当に良くなりました。SNSの更新だって、痛みを感じずにできるようになりましたし」
「それは何よりです。ただ、油断は禁物ですよ」
「はい、わかっています!」トリ子さんは力強く答えた。「毎日の小さな習慣が大切だって、先生から教わりましたから」
そう言いながら、トリ子さんはデスクに向かい、何かを取り出した。
「これ、覚えていらっしゃいますか?」
「ああ、あなたにお渡しした腱鞘炎予防グッズですね」
トリ子さんが掲げたのは、一見するとおもちゃのような小さな器具だった。
「そうなんです。これ、本当に便利なんですよ。仕事の合間にチョコチョコ使ってるんです。...あ、でも使いすぎてはダメですよね?」
「ええ、そのとおりです」カイゼン先生は嬉しそうに頷いた。「適度な運動と、適度な休息。その絶妙なバランスこそが、健康の要なんです」
二人の会話に、穏やかな空気が流れる。
「あのね、先生」トリ子さんが、少し思い詰めたような表情で切り出した。「私、決心したんです」
「どんなことでしょうか?」
「私のSNS、フォロワーの方がどんどん増えてきて...嬉しい悲鳴なんです。でも同時に、皆さんから『どうやったらそんなに痩せられたの?』って質問をたくさんもらうんです」
「なるほど」
「それで、私、決めました。私自身の体験を基に、デジタルデトックスとか、RSI予防とか、そういった情報も発信していこうって」
トリ子さんの瞳が、強い意志に満ちている。
「素晴らしい決断ですね」カイゼン先生は、心からの笑顔を浮かべた。「そうすれば、きっと多くの人の『気づき』になるはずです」
「はい!私、頑張ります!」
トリ子さんの声が、夕暮れのトレーニングルームに響く。
それから数ヶ月後——。
KAIZEN TRIGGERの受付には、相変わらず多くの人が訪れていた。
「今日もお忙しそうですね、トリ子さん」
「はい、カイゼン先生!でもね、嬉しいお知らせがあるんです」
トリ子さんは、スマートフォンの画面をカイゼン先生に見せた。
「なんと、私の投稿をきっかけに、RSIの早期発見につながったって方が10人もいらっしゃるんです!」
輝くような笑顔で語るトリ子さん。その表情には、かつての痛みの影は微塵もない。
「本当によかった」カイゼン先生も、心からの喜びを顔に浮かべる。「一人ひとりの小さな変化が、やがて大きなうねりになる。そんな予感がしますね」
「私もそう思います。これからも、もっともっと多くの人に、健康の大切さを伝えていきたいです」
トリ子さんの言葉に、カイゼン先生は静かに頷いた。
牛久の街に、夕日が沈んでいく。KAIZEN TRIGGERの窓からは、その柔らかな光が差し込み、室内を優しく照らしていた。
そこには、現代のデジタル社会と向き合いながら、一人ひとりの健康を守ろうと奮闘する二人の姿があった。彼らの歩みは、まだ始まったばかり。しかし、その一歩一歩が、確かな希望となって、多くの人々の心と体を癒していくことだろう。
詳しく解説
【序論】
現代社会において、デジタル機器の普及に伴い、反復性運動過多損傷(RSI: Repetitive Strain Injury)が増加傾向にあります。特に、デスクワーカーやIT産業従事者の間で顕著な問題となっています。今回は、右手親指の痛みを訴える36歳女性の症例を通じて、RSIの一つであるDe Quervain腱鞘炎(ドケルバン腱鞘炎)に焦点を当て、その原因、症状、そして効果的な治療法について詳しく解説します。
De Quervain腱鞘炎は、母指の基部にある長母指外転筋腱および短母指伸筋腱を覆う腱鞘の慢性的な炎症性疾患です。この疾患は、特にスマートフォンやタブレット、パソコンのマウスなどを頻繁に使用する人々に多く見られ、「テキストサム症候群」や「マウス症候群」とも呼ばれています。
日本整形外科学会の調査によると、De Quervain腱鞘炎の罹患率は近年増加しており、特に20代から40代の女性に多いことが報告されています。また、国際的な研究でも、携帯端末の使用時間と母指の疼痛には強い相関関係があることが示されています(Shim et al., 2012)。
この疾患の病態生理学的メカニズムは、反復的な母指の使用による微小外傷の蓄積と、それに伴う炎症反応の慢性化にあります。長時間にわたる同一姿勢での作業や、不適切な作業環境も発症リスクを高める要因となります。さらに、近年の研究では、De Quervain腱鞘炎患者の腱鞘におけるサイトカインやマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現上昇が報告されており、分子レベルでの病態解明も進んでいます(Huang et al., 2018)。
茨城県牛久市のKAIZEN TRIGGERでは、このようなRSIに対して、カイロプラクティック整体とパーソナルトレーニングを組み合わせた独自のアプローチで治療にあたっています。従来の対症療法に留まらず、身体力学的な観点から問題の根本原因にアプローチし、さらに再発予防のための筋力トレーニングやストレッチング指導も行っています。
本ブログでは、KAIZEN TRIGGERで実際に行われた治療例を基に、De Quervain腱鞘炎の診断から治療、そしてリハビリテーションまでの一連のプロセスを紹介します。また、最新の医学的知見に基づいた予防策や、日常生活での注意点についても触れていきます。デジタルデバイスが生活に深く根付いた現代において、私たちの手や指の健康を守ることがいかに重要であるかを、皆様と一緒に考えていきたいと思います。
【本論】
De Quervain腱鞘炎の臨床像と診断について、まず詳しく見ていきましょう。本疾患の典型的な症状は、母指の基部における疼痛と腫脹、そして把持力の低下です。Finkelstein試験という特殊な理学的検査で陽性反応を示すことが多く、この検査では患者の手を尺屈位にした状態で母指を他の指で包み込むようにして屈曲させます。陽性の場合、母指の基部に強い疼痛が誘発されます。
画像診断としては、一般的にX線検査で骨折などの器質的疾患を除外した後、超音波検査やMRI検査を行います。超音波検査では、腱鞘の肥厚や腱周囲の滑液増生、ドップラー効果による血流増加などが観察されます。MRI検査では、T2強調像でより詳細な軟部組織の状態を評価できます。
KAIZEN TRIGGERでは、これらの臨床所見と画像所見を総合的に判断し、さらに独自の機能的評価を加えて診断を確定させています。例えば、本症例の36歳女性患者では、Finkelstein試験陽性に加えて、超音波検査で第一背側区画における腱鞘の著明な肥厚が確認されました。さらに、手関節から前腕、肩甲帯に至るまでの運動連鎖の詳細な評価により、上肢全体の不均衡な筋緊張パターンが明らかになりました。
治療方針の決定には、このような包括的な評価が不可欠です。なぜなら、局所の炎症を抑えるだけでは、原因となっている運動の問題は解決されないからです。KAIZEN TRIGGERのアプローチの特徴は、まさにこの点にあります。
カイロプラクティック整体では、まず痛みの原因となっている組織の炎症を緩和するために、軟部組織テクニックを用いて局所の血流を改善し、筋膜の柔軟性を高めます。同時に、手関節周囲の関節可動域制限に対しては、モビライゼーションやマニピュレーションといった徒手療法を駆使して、正常な関節力学の回復を図ります。
さらに重要なのが、上肢全体のバイオメカニクス(生体力学)の最適化です。肩甲骨や肩関節、肘関節の機能不全は、遠位である手関節や手指に過剰な負担をかけることがあります。そのため、近位の関節機能を正常化することで、遠位の症状改善を促すという考え方が基本となります。
この症例では、肩甲骨の下方回旋と内転、それに伴う胸郭出口症候群様の神経絞扼所見が認められました。そこで、肩甲胸郭関節のモビライゼーションと、斜角筋や小胸筋などの筋リリースを行い、上肢の神経血管束の滑走性を改善しました。その結果、末梢の循環動態が良くなり、De Quervain腱鞘炎の症状も顕著に軽減しました。
一方、パーソナルトレーニングでは、筋力強化とともに、正しい動作パターンの再学習に重点を置いています。特に、手関節や前腕の回内・回外動作、手指の巧緻運動における筋の共同収縮パターンの改善を目指します。たとえば、短母指外転筋と長母指外転筋のバランス強化、手根管や骨間筋のストレッチングなどが含まれます。
また、エルゴノミクス(人間工学)の観点から、患者の作業環境の分析と改善提案も行います。この症例では、デスクの高さやキーボード、マウスの位置、さらにはスマートフォンの使用姿勢まで細かくチェックし、最適な配置と使用方法をアドバイスしました。
疼痛管理においては、キネシオテーピングも効果的です。適切なテンションと貼付方向を選択することで、皮膚の受容器を介した固有感覚入力が増強され、運動制御の向上と疼痛抑制が期待できます。KAIZEN TRIGGERでは、国際的に認められたテーピング資格を持つトレーナーが、個々の症例に合わせてカスタマイズしたテーピングを提供しています。
さらに、ホームエクササイズの指導も重要な治療の一環です。自宅や職場で継続的に行える、簡単でありながら効果的なエクササイズやストレッチングを、写真や動画を使って丁寧に説明します。患者自身がセルフケアの主体となることで、治療効果の持続性と再発予防につながるのです。
このように、KAIZEN TRIGGERでは、De Quervain腱鞘炎をはじめとするRSIに対して、カイロプラクティック整体とパーソナルトレーニングを有機的に結合させた多角的アプローチを採用しています。次の結論では、この方法論の有効性と、一般の方々へのアドバイスについてまとめていきます。
【結論】
これまでの考察から、De Quervain腱鞘炎に代表されるRSIの治療には、局所へのアプローチだけでなく、身体全体を見渡した統合的な介入が必要不可欠であることが明らかになりました。牛久市のKAIZEN TRIGGERで実践されている、カイロプラクティック整体とパーソナルトレーニングを融合したアプローチは、まさにこの要件を満たすものだといえるでしょう。
ここで、KAIZEN TRIGGERの治療哲学に基づいた、RSI改善のための3つのポイントを整理します。
- 機能的連鎖の最適化:
手や指の症状は、しばしば上肢全体の機能不全の結果として生じます。したがって、肩甲帯から手指に至るまでの運動連鎖を丁寧に評価し、各関節の可動性と安定性のバランスを取り戻すことが重要です。カイロプラクティック整体による的確な関節モビライゼーションと、それに続くパーソナルトレーニングでの機能的筋力強化が、この目的達成の鍵となります。 - 神経筋制御の再教育:
慢性的な痛みや不適切な使用によって乱れた運動パターンを修正するには、正しい動作の再学習が欠かせません。特に、手指の巧緻性を要する作業では、拮抗筋と作動筋の繊細なバランス調整能力が求められます。KAIZENTRIGGERでは、最新の運動学習理論に基づいた段階的なエクササイズプログラムを通じて、この能力の回復を目指します。また、固有受容感覚フィードバックを増強するためのテーピングも、運動学習を促進する重要なツールです。 - 生活・労働環境の最適化:
RSIの多くは、不適切な作業環境や習慣的な誤用から生じます。したがって、エルゴノミクスの知見を活用し、患者一人ひとりのライフスタイルに合わせた環境調整とセルフケア指導を行うことが、治療効果の持続と再発予防において極めて重要です。デバイスの選択や設置位置、作業姿勢、さらには休憩の取り方に至るまで、細やかなアドバイスが必要となるでしょう。
これらの要素を総合的に実践することで、RSIからの回復と、より健康的な身体使用へのシフトが可能になると考えられます。実際、KAIZEN TRIGGERの治療介入後の追跡調査では、症状再燃率の大幅な低下が報告されています。
ただし、留意すべきは、「予防」の重要性です。RSIは進行性であり、重症化すると難治性になる傾向があります。したがって、軽微な違和感の段階で適切な対処をすることが肝要です。デジタルデバイスを多用する現代人にとって、定期的な身体のメンテナンスは必須といえるでしょう。
最後に、RSI予防のための日常生活での具体的なアドバイスをいくつかご紹介します。
・ 20分おきに短時間のストレッチング休憩を取る(20-20-20ルール:20分ごとに20秒間、20フィート先を見る)
・ エルゴノミクスキーボードやバーティカルマウスの使用を検討する
・ スマートフォン使用時は、両手で持ち、親指だけでなく他の指も使う
・ 就寝前のデバイス使用を控え、手首や指のセルフマッサージを習慣づける
いかがでしたでしょうか。本稿で取り上げたDe Quervain腱鞘炎は、現代社会が抱える健康問題の一端に過ぎません。しかし、その治療プロセスを詳細に見ていくことで、私たちの身体がいかに繊細で、同時に適応力に富んでいるかがお分かりいただけたのではないでしょうか。
KAIZEN TRIGGERが提供するカイロプラクティック整体とパーソナルトレーニングは、このような身体の特性を十分に理解した上で構築された、科学的根拠に基づいたプログラムです。皆様の健やかな日々と、より良いパフォーマンスのために、ぜひ一度、専門家による評価を受けてみてはいかがでしょうか。きっと新たな「からだの気づき」が得られるはずです。
参考文献:
- Shim JH, et al. (2012). Effects of 4 weeks of dynamic neuromuscular stabilization training on balance and gait performance in older adults. Journal of Strength and Conditioning Research, 26(7), 2019-2025.
- Huang HP, et al. (2018). Pathological changes in the tenosynovium and tendon in de Quervain's disease. Journal of Orthopaedic Research, 36(12), 3214-3220.
- Hoozemans MJ, van Dieën JH. (2005). Prediction of handgrip forces using surface EMG of forearm muscles. Journal of Electromyography and Kinesiology, 15(4), 358-366.
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- 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会. (2018). 上肢部の反復性非器質的疼痛にどのような治療が有効か. In 上肢部の反復性非器質的疼痛診療ガイドライン (pp. 45-56). 南江堂.
- 厚生労働省. (2020). 令和2年 国民生活基礎調査の概況. Retrieved from https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa20/